無垢の木に使う天然系ワックス(自然素材)の施工性・撥水・耐水・防水性についての実験
私共が設計させていただくお家は、水廻りにも木材(無垢材、集成材)を使用することが多いです(^_^)
無垢材は風合いも良く体にも優しいですが、水には弱いです(-_-;)
ウレタン塗装や木目プリントの製品は耐水性もあり扱い易いですが、風合いや素材感がいまいち・・・。
無垢材の質感や風合いを活かしつつ、耐水性を向上させる方法はないのか?
今までは蜜蝋ワックスを塗っていましたが、さらなる撥水・耐水・防水性を求め新たなワックスを開拓しようと思います!
天然系ワックスを探そう!
過去の記憶をたどって・・・
ふと思い出したのは、以前お家を設計させていただいた施主さまのお話。
造作キッチンの天板は無垢の接ぎ板を使用しています。
キッチンなのでシンク廻りはもちろん水で濡れます。
そこで耐水性を確保すべく、施主さまは天然系ワックスでDIYを行ったとのこと。
「『アウロ』だったか、何だったか言ってたな。よし、施主さまの家づくりブログを拝見しよう!」
AUROを発見
施主さまのブログを拝見すると、やはり使用されたワックスは『AURO(アウロ)』のものでした。
そこで早速インターネットで検索・・・。
AUROはドイツの会社です。
HPから引用すると、
環境先進国のドイツでは【自然塗料=原則的に石油を含まない塗料】という定義があります。
とのこと。
「そうでしょうね、自然なんだからっ」
と思いながら読み進めていくと
日本国内では、「天然成分よりも安全と称する不可解な石油」が存在し、主に溶剤として使われています。
溶剤は通常、塗料の大半を占める重要な成分ですから、溶剤が石油ということは、その塗料のほとんどが石油といっても過言ではありません。(HPより引用)
「・・・。え?多少は入っているかもと思っていたが、大半、ほとんど・・・。」
「ならば余計にこのアウロを使ってみなければっ!」
と、言うことで早速サンプルを請求してみました。
3種類までサンプルを貰えるとのことなので、施主さまがご使用されていた『No.129 天然油性オイルワックス』『No.171 天然樹脂ハードワックス』に加えて『No.690 天然水性オイルワックス』の3点を選びました。
実験してみよう!
請求してすぐにサンプルが届きました。
内容量は10mlです。
いつも使用している蜜蝋ワックスとAURO3種類の計4種類で、施工性、撥水・耐水・防水性の実験を行います!
施工性の実験
まずは施工性から。
タモの無垢材(フローリングの端材)にウエス(布)で塗布していきます。
①蜜蝋ワックスCタイプ
・状態:固形(マーガリンくらいの硬さ)
・施工性:非常に良い◎
②AURO No.129 天然油性オイルワックス
・状態:液体
・施工性:非常に良い◎
・匂い:オレンジの匂い
②AURO No.690 天然水性オイルワックス
・状態:クリーム状
・施工性:あまり良くない△
②AURO No.171 天然樹脂ハードワックス
・状態:固形(マーガリンくらいの硬さ)
・施工性:良い◯
塗布後がこちら。
蜜蝋ワックス、No.129、No.171の3種類は濡れ色になりました。
No.690はあまり変化無しです。
写真では分かりにくいですが、No.690は木材表面に毛羽立ちが・・・。
タモの集成材に塗布してみると、もっと毛羽立ちがひどく、ワックスを塗り伸ばす際に木材表面がガサガサになりすぎて上手く塗布出来ませんでした。(右側の写真)
AUROのホームページでは・・・
AUROのホームページでは、塗り易さは下記の様に表記されています。
・No.129:◎
・No.690:◯
・No.171:△
実際に塗ってみた感じとメーカー側の指標が違っているので、サンプルがある場合は必ず試した方が良いですね。
撥水・耐水・防水性の実験
続いて撥水・耐水・防水実験です。
用いた材料はタモの集成材です。
様々な組み合わせ10パターンを作成しました。
①蜜蝋ワックス
②No.129 天然油性オイルワックス
③No.690 天然水性オイルワックス
④No.171 天然樹脂ハードワックス
⑤No.129 天然油性オイルワックス+No.171 天然樹脂ハードワックス
⑥No.690 天然水性オイルワックス+No.171 天然樹脂ハードワックス
⑦No.129 天然油性オイルワックス 2回塗
⑧No.690 天然水性オイルワックス 2回塗
⑨No.129 天然油性オイルワックス 2回塗+No.171 天然樹脂ハードワックス
⑩No.690 天然水性オイルワックス 2回塗+No.171 天然樹脂ハードワックス
(写真の順番と上記の番号順が異なりますがご了承下さい)
動画で見てみよう
そして撥水・耐水・防水実験の映像がこちらです。
よく水を弾いています!
何だかどれも同じくらい、水を弾いています。
と、いうことで、性能的にはどれも問題なさそうです。
水を放置した場合の実験
ここで気になるのが、水に濡れたことに気づかずに放置してしまった場合はどうなるのか・・・。
実験してみましょう!
無塗装では・・・
無塗装の木材に水を落としてみます。
この時点で、水がけっこう木材に染み込んでいます。
そのまま1時間放置してみます。
左の写真は1時間後の状態、右の写真は水を軽く取り除いた状態です。
木目に添って殆どの水が染み込んでいます。
ワックスを塗装したものは・・・
続いてワックスを塗布した木材に水を垂らしてみます。
水を弾いており、水の形状がぷっくり盛り上がっています。
1時間後です。
ほとんどが1時間前の状態と同じですが、『③No.690 天然水性オイルワックス』と『⑧No.690 天然水性オイルワックス 2回塗』は少し水が染み込んでいるように感じます。
水を軽く取り除いてみます。
やはり前述の③と⑧はかなり水染みができています。
水染みは・・・
ここで意外だったのは、『⑥No.690 天然水性オイルワックス +No.171 天然樹脂ハードワックス』と『⑩No.690 天然水性オイルワックス 2回塗+No.171 天然樹脂ハードワックス』が一番キレイな状態でした。
No.690単体だと水染みができるのに、No.171のハードワックスを重ね塗りすることで一番水染みができにくかったです。
No.129を用いたものとNo.171単体で塗布したものは、かなり目を凝らして見ないと分からないくらいの水染みでした。
写真では分かりにくいですが、蜜蝋ワックスは白い染みができました。
たとえ白い染みが出来たとしても上から蜜蝋ワックスを再度塗れば問題ありません。
まとめ
施工のし易さ、撥水・耐水・防水性、水染みのできにくさを考えると、『No.129 天然油性オイルワックス』が良いのではないでしょうか。
完全硬化には2~3日掛かるようです。
こまめに手入れを行う方には蜜蝋ワックスもオススメです。
施工のし易さと材料費は4種類の中で1番で、メンテナンスもし易く、水染みができても上からまた塗ってしまえば良いのですから。
No.171も性能的には良いのですが、完全硬化まで4週間掛かるそうです(-_-;)
時間に余裕のある場合にはこちらを用いても良いですね。
工藤住環境設計室としては、蜜蝋ワックスを主体に、要所要所でNo.129の併用もしていきたいと思います(^_^)