2017/07/14 | ブログエコ住宅・住環境・温熱環境お家のトラブル高気密・高断熱住宅

関西エリアで基礎断熱や床下エアコンは必要なのか?

工藤住環境設計室の工藤です。

蒸し暑い日が続きますね。

今回は木造住宅の基礎断熱について、お話させて頂きます。

基礎断熱とは何か?

基礎断熱とは、通常の1階床面にて断熱材を施工する床断熱工法とは違い、コンクリート基礎部分にて断熱を施工する方法です。

床断熱工法

基礎断熱工法1

基礎断熱工法2

 

基礎断熱工法には大きく分けて2つの方法が御座います。

基礎断熱工法1は、外周部の基礎コンクリート立上り部分と、その立上りから1m程度の基礎コンクリート床面に断熱材を施工する基礎断熱です。

関西エリアで比較的普及する基礎断熱の工法ですが、注意が必要です。

基礎コンクリート床面の、断熱材を施工していない部分の温度は、断熱材が存在しないので地中の温度になるのはお分かりですね。

地中の温度は年間を通して約17℃の一定の温度です。

梅雨時期や夏の暑く湿った空気がこのコンクリートに触れると結露をおこしてしまいます。

また、コンクリート基礎には多くの水分が含まれていますので、コンクリートを打設してから2年程度は、この水分も結露の原因となります。

結露を防ぐ為には、また、結露した水滴を取り除く為には、床下の空気を換気する必要が御座います。

基礎断熱の床下空間は温熱境界としては室内になるので、外気を取入れるのでは無く、室内の空気を取り込む必要が御座います。

 

基礎断熱工法2は基礎コンクリート床面にも全て断熱材を敷き詰めるので、地中温度による結露の問題は無くなります。

しかし、コンクリートの水分による結露の問題は工法1と同じです。よって、床下の換気は必須となります。

基礎断熱工法2は、温熱的な欠損部分(熱橋部分)が無いのですが、コンクリート基礎の下に発泡系断熱材を敷き込む事に不安が残ります。

断熱材を食べるシロアリによる食害や、断熱材の劣化により、建物が沈下する可能性もあると考えております。

 

床下エアコンは必要なのか?

基礎断熱の住宅において、セットとも言える床下エアコンについて、考えてみましょう。

先ず、何故床下エアコンが必要なのかですが、床下から暖房することによりエアコンの風が直接体に当たらず、快適な空間になるといった事がよく言われています。

本当にそうなのでしょうか?

床断熱と較べて、床の直下に断熱材が無いので、床の表面温度がどうしても低くなってしまいます

それを補う為に床下にエアコンを設置した事も理由の一つです。

夏季、床下エアコンにて冷房を行う為には、換気システムを併用して床下の空気を室内に押し上げる必要も御座います。

温かい空気は上昇し↗冷たい空気は下降↘します。

温熱計算上では、エアコン1台の能力で家全体の空調をまかなう事が出来ても、床下エアコン1台で家全体の空調をまかなう事が、現実的には難しい事が多いです。

 

何故、基礎断熱は普及したのか?

基礎断熱が何故普及したのかについて、ご説明させて頂きます。

元々は北海道や東北地方などの寒冷地において、床下が外気温度になってしまうと設備配管が凍結してしまう為、床下空間が室内温熱環境になる基礎断熱が普及致しました。

基礎断熱=高断熱住宅といった間違った考えが広まり、関西でも基礎断熱の施工が行われるようになったと考えられます。

また、基礎断熱は床断熱に較べて気密が取りやすいといった意見も御座いますが、床断熱でもしっかりとした気密処理を行う事により、C=0.5以下にする事は十分に可能です。

(工藤住環境設計室では、床断熱にてC=0.5以下の設計・監理・CMマネージメントの実績が御座います)

基礎は床断熱と較べて、コストも掛かる工法です。

これらの事を考えると、関西エリアで基礎断熱を行う事が適切なのでしょうか?

結露のリスクや冬場の床面の温度、シロアリ被害・基礎沈下やコストの事を考えると、工藤住環境設計室では床断熱を推奨しています。

余談ですが、先日参加した研修会において、新住協代表理事(鎌田先生)も『関西で基礎断熱はいらないのでは』とお話されていました。

 

最後に、家造りは流行りのDesignや工法に惑わされず、知識を持った者が適切にセレクトする必要があると思います。